物理教師の私から言わせれば、スラムダンクの桜木花道は超エリートだったと思う。

2017-06-16雑学(アニメ)

赤木式問題集

スラムダンクはご存じですか?
私が小学生のころに始まったこの作品の影響により、当時、一大バスケットブームが到来しました。

そんなスラムダンクの連載やアニメが終了して早20年余り。

スラムダンクに登場する人物達の年齢の倍ほどを生きてきて、彼らを教える立場(教師)まで経験した私は、ふとスラムダンクで描かれたある一場面に違和感を覚えました

本日はそんなお話です。

 

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スラムダンクに登場する赤木式問題集<物理>

スラムダンクとは、1990年から1996年にかけて、週刊少年ジャンプに全276話にわたり連載された漫画で、アニメ放送やゲームも制作されている大人気バスケット漫画です。

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連載当時からスラダンの通称で広く人気があり、かくいう私も、人として大切なことはスラダンを通して学んだと言ってもいいくらいです。

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そんな、今でもまだまだ根強いファンがいるスラダンですが、私もふと読み返した時に、教師(理科)をしていたせいか、あるシーンでふと手が止まりました

 

問題のシーンがこちら

スラムダンクの漫画連載では

#193 全国が危ない

アニメ放送では

第91話全国が危ない!

で登場する赤木式問題集<物理>です。

赤木式問題集スラムダンク

この回の話を簡単にお話すると

  • 赤点が4つ以上ある学生はインターハイに行けないという校則が、舞台となっている神奈川県立湘北高校には存在している。
  • スラムダンクの主人公、桜木花道を筆頭に、主役級であり、チームの主要選手達はもれなく欠点科目を複数保有している。
  • バスケット部キャプテンである赤木剛憲(通称ゴリ)の家で、勉強合宿。
  • 追試に挑む

といったようなお話です。

 

詳しい内容や、どんな話だったっけ?という方はこちらをどうぞ

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花道のテスト珍回答に笑った小学生時代、しかし今となれば

初めて読んだ時はもちろんの事、今まで何度も読んでいた(見ていた)このシーンは

学校のテストで

このくらいの角度

と答える、このインパクト。

 

ここが最高に笑った。

 

この、花道のある意味天才な行動に感銘を受けて、当時マネをする生徒がいたとか、いなかったとか…。(私は授業ネタで使っていました。)

少なくとも小学生だった私は、大いに笑いました。

 

「なんだ、このくらいの角度ってwそんな答え方アリかよ」

 

って。

 

しかし、そんなある日、この1コマを改めて見たところ、子どもの頃には笑うことしかできなかったスラムダンクのワンシーンに、いろいろと疑問を感じてしまったのです。

 

スラムダンクに登場する赤木式問題集<物理>を再現してみた

とりあえず、疑問を解消するために

このシーンの1コマから、拾えるだけの情報を集め、(元物理教師の名にかけて)赤木式問題集<物理>を再現して見ました

スラムダンク赤木式問題集

台詞や文字かぶりがあるため、わからないところは黒く塗りつぶしています。

 

また、書体の正確性は求めていませんので、改行の位置や書式(漫画では手書きなので書式も何もないけど)については、全く気にしていません。

なので、完全再現とはいいませんが、書かれている内容については合っています

 

ゴリが作った問題は大きく2つです。

  1. 斜方投射の問題
  2. 等速円運動の問題

これが、当時には感じなかったのですが、現在の私はとても興味深く感じたのです。

 

そもそも、県立高校の1年生がこの問題を解けるか?

今から約20年前の高等学校学習指導要領(理科)を見ると、当時は物理ⅠAまたはⅠBと分けられており、その上に物理Ⅱが存在している科目設定でした。

 

多くの学校で、高校1年生(又は2年生)に1年かけて物理ⅠAまたはⅠBを学習し、進級した後、必要に応じて(文系理系に応じて)、物理Ⅱを履修します。

第3 物理ⅠB /1 目標 /物理的な事物・現象についての観察、実験などを行い、物理学的に探究する能力と態度を育てるとともに基本的な概念や原理・法則を理解させ、科学的な自然観を育成する。

 

第4 物理Ⅱ /1 目標/物理的な事物・現象についての観察、実験や課題研究などを行い、物理学的に探究する能力と態度を育てるとともに基本的な概念や原理・法則の理解を深め、科学的な自然観を育成する。

引用(一部改編して表記):文部科学省HP

 

この当時は、ゆとり教育などとはほど遠く土曜も半日授業をしていたり、高校生で学ぶ理科は、物理、化学、生物、地学の中から3科目を一通り勉強していた時代です。

 

花道は当時1年生

夏休み前だということを考えるとまだ中学を卒業してから2~3ヶ月しか経っていません

 

ちなみに、キャプテンのゴリ(赤木)は、高校3年生で、漫画では補習なんかも受けていたり、難しい問題なんかも解いていたりするので、割と進学を意識した理系クラスにいるようです。

 

さて、私が疑問を抱いたのは

わずか高校生活2~3ヶ月の生徒であった桜木花道が、この問題を解けるかどうか?

ということでした。

 

ゴリさん、この問題難しすぎやしませんか?

再現を見ていただくとわかりますが、問題は2問。

  • 1問目は物理ⅠB「力と運動:落体の運動」という分野
  • 2問目は物理Ⅱ「円運動と万有引力:等速円運動」という分野

で習う知識が必要になってきます。

県立湘北高校は設定では県立高校普通科のようですので

当時のごく一般的な(他校と比べて、学習する内容が大きく逸脱していない)学習指導計画だと考えられます。

 

しかしそうすると次のような矛盾や可能性が考えられてしまったのです

 

花道が物理Ⅱをすでに習っている

これが確かなら、桜木花道は超エリートコースに在籍しています

 

高校に入ってすぐの中間テストまでに、物理ⅠBの学習を終え(まず不可能だが)

期末テストの範囲で物理Ⅱの内容に入っているため、そのテストで赤点を取った桜木花道に対する補習として、ゴリが用意した2問目に、角速度を求める問題が出て来ていると考えられます。

 

繰り返しますが

1問目の斜方投射は物理ⅠBの内容。
2問目の等速円運動は物理Ⅱの内容

の内容なんです。

物理IBと物理Ⅱの内容を同時に出題しています。大学入試でもなんでもないのに。

 

一般的に、該当学期の成績というのは、中間テストと期末テストの合計点数から算出した成績を基にに付けられます。

中間テストの成績話は描かれていないのでわかりませんが、おそらく花道なら欠点でしょう。そして期末テストでも欠点だったため、補習になったワケです。

そして補習で勉強する内容は、その学期間で学んだ事を中心に行います。

 

花道は中学を卒業して、通常1年かけて教えてもらう内容を、わずか2ヶ月足らずで教え込まれ、(中間テストは欠点かどうかは定かではないが)その後の期末テストで欠点を取ってしまったために、夏休みに補習する運びと考えられます。

 

これは完全にそんなカリキュラムを組んでいる学校が悪い

 

そもそも物理の基礎的な内容を1年かけてやるのでもしんどいのに、それをたった2ヶ月でやろうなんて。

しかも、2ヶ月前まで中学生だった子達にやらせるだなんて。とんでもない学校です。

 

花道の「天才ですから」は、きちんと裏付けされた台詞だった

いやちょっとまてよ。

むしろ、欠点を取っている人の方が少なそうな気がするので、花道以外(主要キャラ以外)のクラスメイト達は、このカリキュラムで(指導計画及び試験内容で)欠点を取っていないということですね。

 

これはこれで驚きです

湘北高校は超進学校であることを認めざるを得ません

 

そうすると、超進学校の高校に通う生徒達は

当然に中学時代から勉強ができ、各中学校のトップ達が集結している学校だとも考えられますので、当然、そこに通うことになった花道も中学までは成績上位だったということに

 

あながち花道の口癖である

天才ですから

は、それ相当の裏付け(または過去の栄光)によるものかもしれませんね。

天才ですから

 

ちなみに・・・

これが正しいなら、主要キャラの一人である流川は、湘北高校に進学を希望した動機

近かったから

という理由です。

 

そんな理由にもかかわらず、入学できてしまっている流川の実力は計り知れないものがあります

 

その上、全国選抜にも選ばれる運動能力を有していて、イケメン

天はこの男に三物も与えてしまっています

 

ゴリの作成した予想問題が、花道のための問題では無かった

次に考えられるのが、ゴリが作った赤木式問題集<物理>が、花道にあった難易度じゃ無かった可能性があります。

 

そもそもゴリは3年生

花道が習っていること(高校1年生で習う物理)の内容など、2年前の内容であり、さらにおそらく受験勉強をしている最中であろうゴリは、物理ⅠB、物理Ⅱといった科目の棲み分けなど全く意識せず、物理を系統的に勉強していたかも知れません。

 

そんな中、2コ下の後輩が欠点を取ってしまい、勉強を教えなくては自分の部活人生が大きく変わってしまう。

後輩が欠点を取ってしまったなど、ゴリの人生から見れば通過点にしたいハズです。彼にとっては、激戦を制した山王戦ですら、通過点なのですから。

 

そんな状態で作成されたのがあの赤木式問題集だったと考えられます。

 

本来花道が習っていない「物理Ⅱの内容である円運動の問題」を出題され、おそらく花道の回答は、イラストを見る限り「2回転」だと思いますが、彼なりに答えてはいるのです。

途中式など一切ないのですが。

 

さらに、1問目に至っては完全解答とは言わないまでにしろ、概ね合っているのです。(解説は本ページ下部で行っています。)

 

もっと言えば、欠点補習なので、まぁ湘北高校の進学率や補習内容を想像でしか話せませんが、一般的な県立高校であれば、公式を使った(数字を当てはめるような)簡単な問題で出題されるはずです。

なんせ、欠点を回復するのが欠点補習なので、欠点(=最低限の知識理解が出来ていないこと)を補習すればいいだけですからね。

私はよく、補習でやった内容(プリント)を、そっくりそのまま追考査で出して…ごにょごにょ

 

 

花道なりに答えを出し、1問目に至っては×にはしにくいほどの回答。

それにも関わらず、ゴリは、花道の解答に対してプルプルと震えながら怒りがこみ上げています

 

いやいや、ゴリさんよ。

「こっちが一生懸命教えてるのに、ふざけられた」から、ムカツク!という感情はわからなくもないですが、そもそも花道にとってみれば習ってない内容で、ましてや追補習のレベルではない高難易度の問題

 

それなのに、ゴリがキレるなんて筋違い。

 

むしろ、花道の方こそ「難しすぎるわ!」と、再びゴリの頭にスラムダンクを炸裂しなくてはなりません。

ゴリの頭に花道がダンク

 

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実際スラムダンクに書かれた問題を解いてみると

赤木式問題集

では、花道はどう答えるべきだったか。

 

ちなみに、2問目の方は

  • 等速円運動の問題であること
  • 回転数を聞かれていること
  • 角速度を聞かれていること

まではわかるんですが、いかんせん情報が完全に読み取れませんでしたので、1問目を解いてみます。

 

1問目は斜方投射の問題

一問目は、物理を習う学校であれば割と初期に勉強する、力学分野の特に落下運動についての問題です。

※この先閲覧しているブラウザによっては、数式がきちんと表示されない場合があります。

 

問題

水平面からθの角度をなして速度v0で斜め上に投げ上げた物体の水平方向の到達距離Sは

S=(2v02sin⁡θcos⁡θ)/g =(v02sin⁡2θ)/g

と表すことができる。では物体を最も遠くまで飛ばすための角度θはどんな値か。

 

解答と解説の前に・・・

物理を習っていない、又は習ったけど斜方投射はやっていない覚えていないなどという方の為に簡単に説明します。

 

斜めにモノを投げる運動を斜方投射といいます

 

この、斜めにモノを投げる運動を考えるには、横方向と縦方向を分けて考える必要があります。

  • 縦方向の運動は、鉛直投げ上げという運動
  • 横方向の運動は、等速直線運動という運動

 

鉛直投げ上げ

 

横方向は等速直線運動

これを合体してあげると、放物運動になります。

 

両方合わせると放物線を描く

実際私たちには「オレンジのボールの軌道」しか見れないのですが、その成分(動きかたの内訳とでもいうと、わかりやすいかな?)は、横と縦で別の運動をしていると考えます。

 

そして、距離を求めるには

  1. 縦方向の運動から、最高点に到着するまでの時間を導きだして(てっぺんにいくまでの時間)
  2. その時間の2倍が着地するまでの時間なので(往復するからね)
  3. 2倍した時間を横方向の運動で用いて(往復分の時間、横向きに”スーッ”と動いていたから)
  4. 速さ×時間=距離

で、到達距離が求められるます

 

詳しい計算は省きますが、このようにして求めた到達距離は(2v02sin⁡θcos⁡θ)/gとなります。

θには角度が入ります。(30°とか60°とか)

 

さらにゴリは、省略ついでに数学で習う2倍角の公式もさらっと使っています

 

三角関数が苦手な方は多いと思いますが

(2v02sin⁡θcos⁡θ)/g

のうち、太字の部分2sin⁡θcos⁡θ

sin⁡2θ

と同じであるという、加法定理から導き出すことのできる公式です。

ちなみに、gというのは、重力加速度のことで、およそ9.8m/sという大きさの、決まった値をとる定数だと思ってくれて構いません。

 

・・・一気に難しくなりました。

こんな難易度の問題を、花道は高校1年生で解いているのです。(中学卒業してからわずか3か月!!

ここから、花道が答えるべき解答にうつります。

 

解答と解説

(v02sin⁡2θ)/gのうち、v02とgは角度によらず初期条件で決まる値です。

なので、少しだけ見やすくして

v02/g × sin⁡2θ

としてやると、角度によって変わる部分は、sin⁡2θの部分だけということがわかります。

 

この

v02/g × sin⁡2θ

によって求められる値が、最大(=最大距離)となるためには

sin⁡2θが最大となるようなθを決めてあげればいい

のです。(ついてきてますかw?)

 

sin関数は、-1≦sinθ≦1 が値となります。ちなみにsinθ=1が最大値です。(sin90°=1)

今、θに当たる部分が2θですので、正確に書くのであれば

-1≦sin2θ≦1

となります。

 

さっき登場した

-1≦sinθ≦1

について言うと、それぞれ対応する角度θは

-90°≦θ≦90°

となりますので、これも含めて考えれば

-1≦sin2θ≦1

-90°≦2θ≦90°

-45°≦θ≦45°

となり

 

θが45°の時、最大飛距離になるわけです。(ちなみにそのときの最大距離の大きさはv02/g(m)です。)

 

なんと、具体的な数字こそ出していませんが、桜木花道は直感で正解にたどり着いていたのです。(花道が書いた”このくらいの角度”は45°のように見えるので)

さすがは天才!!

まとめ

いかがでしたか?後半特に難しかったとは思いますが…。

こんな難しい内容を、学校が原因か、ゴリが原因かはわかりませんが、花道は解かされていたのです。

 

花道が欠点を取ってしまう気持ちもよくわかりますよね。

そして、それを当たり前に解いているクラスメイト達を考えると、ひょっとすると花道は超エリートの進学校(または進学クラス)に在籍しているかも?ってことも推察できます。

 

花道すごい。

 

最後に余談を一つ。

スラムダンクに登場する県立湘北高校のモデルとなった学校は、神奈川ではなく、東京にあります。その学校とは

東京都立武蔵野北高校

だと言われています。

 

ちなみにこの高校の偏差値は65だそうで、偏差値から単純に考えれば、トップから上位7%以内に入りますので、いわゆる進学校の部類です。

 

やはり、花道の「天才ですから!」という台詞は、自信の裏付けがあるのかも?!

 

久しぶりにスラムダンクを読みたくなりませんか?

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