身近な乗り物である「新幹線」の速さは、平均時速250km前後。
新幹線より速さを実感できる乗り物である「車」が時速80km~100kmほど。

自動車は、高速道路を走る(一般的な)法定速度で話しています。
そんな速さを凌駕する時速1,225kmという速さ。
これはとてつもなく速い。
東京ー大阪間を約20分※ほどで移動出来てしまう速さです。
※直線距離400kmとして
秒速でいえば340m/s。
すなわち「1秒で340mも進むことが出来る」ということ。
こんなものすごい速さである「時速1,225km」で進むもの、それは車よりも新幹線よりも身近で日常的に存在している「音」です。

本日は、物理教師がアニメを語るとシリーズ第7弾にして、初となる
現象から見るアニメ
について語ろうと思います。

音についての基礎知識と豆知識
この先をより楽しんでもらうためにも、あくまで物理の授業にならない程度におさらいしておきます。

(出来るのかしら…。)
音とは、物体(多くの場合「空気」)が「振動」した結果を「聴覚」で感じることができるもの。
※物理では「縦波(疎密波)である」などと表現しますが、難しくなりすぎるので割愛。
音の伝わるスピードは「温度」「圧力」によって変わりますが、地上(の空気中)であれば
1秒間で340m進む。
すなわち「340m/s(=時速1,225km)」で伝わっていきます。
また、音は「振動」が「伝わる」ので
伝えるもの(媒質)が無ければ、伝わらない。
伝えるものの間隔が「ギュ」としているものほど、より速く伝わる。
ということもポイントです。

また、一般的に「気体<液体<固体」の順(ギュっとしている順)で音速は大きくなります。

ここで雑学(余談?)を二つ。
シンクロで使われるプールには、プールの中にもスピーカーがある。
ダイビングなど、水中で物音を聞いただけでは、音源の方向は特定しにくい。
シンクロで使用するプールの中には、地上(観客)と演技者で曲がズレないように「専用スピーカー」が設置されています。

もちろん「プールの外からでは、水中にまできちんと音が届かない」という理由もあります。
また、音が来た方向は一般的に「右と左の耳」に届く音の「わずかな時間差」によって認識します。しかし水中(の音速)は「地上の約5倍」なので、「両耳にほぼ同時」でやってきます。
そのため時間差を感じられず、音がやってきた方向を特定できません。

さてここで一つ問題です。「音速」の英語はご存知ですか?

「マッハ」ですね?

音速は英語で「speed of sound」といいます。

ま、音速のつもりでマッハを使っても、伝わりますけどね。
マッハ1なら約1,225km/h、マッハ2なら約2,450km/hということですね。
そして物体(音源)が「マッハ(またはそれに近い速さ)」を超えると「衝撃波」が生まれ、通称「ソニックブーム」が発生します。

ソニックブームとは衝撃波が作り出す「轟音」またはそれが転じて「衝撃波そのもの」を表します。
仮にガイルが放つソニックブームが本当にソニックブームなら、対戦者は「防音対策」までしっかりしなくてはいけません。

衝撃波のメカニズムを教えたくてうずうずしますが、難しくなりそうなので知りたい方はこちらをどうぞ。
簡単に音と速さについてまとめれば
- 音は、物体の振動が伝わっている。
- そのスピードは、時速1,200km以上。(秒速340m)
- 振動が伝えられなければ、音は聞こえない。
- マッハ1は音速と同じ。
- マッハには「衝撃波」「ソニックブーム」がつきもの。
このあたりを押さえておきましょう。

マッハパンチは、想像を絶する
「魁!!男塾」のJ(ジェイ)
「グラップラー刃牙」の愚地克巳
彼らは「マッハパンチ」を武器としています。

愚地克巳の放つパンチにより、轟音が鳴り響いてますね。
>>グラップラー刃牙 [完全版] (1-24巻 全巻)
>>魁!!男塾 [文庫版] (1-20巻 全巻)

1秒間に何発撃つ?
一般的に、成人男性の腕の長さの平均は70㎝ちょっとです。(72㎝~75cm前後)
計算しやすくするために、彼らの腕は長い(80cmくらい)と仮定します。
そうすると、パンチ1発あたりのこぶしの移動距離は、単純計算で往復1.6m。
音速(マッハ)は「1秒で340m進む速さ」なので、こぶしのスピードが「マッハ」となるためには
1秒で212回ほど打ち込んでいる計算
になります。(340÷1.6=212.5)

ちなみにこのように考えられたパンチは、その場を往復する「単振動」とも考えられるので、そうなると振動数の考えも出てきます。
振動数とは「1秒で何回振動するか?」を表した物理量。単位は「Hz(ヘルツ)」で表します。
1秒で212回振動していると考えれば、「マッハパンチ」は212Hz。
音階の基準(調律などで用いられる音の高さ)である「ラ」の振動数は、440Hz。1オクターブ低い「ラ」の音が220Hzです。
ということは、マッハパンチを繰り出すと
(ほぼ)低い「ラ」を奏でながら、相手をシバく
ということになるんじゃ…。
ただ、音速を超えてるために「ソニックブーム(轟音)」が発生しますから、低い「ラ」の音はかき消された結果、元々のシーンのような「すさまじい音」がその場に鳴り響いてそうですね。

一撃必殺のパンチが、マッハパンチとなるためには
この説明だと、マッハパンチはもれなく「多弾攻撃」となります。
しかし中には、マッハパンチが「一撃」の場合も多いです。

さっきは1秒を基準に考えたので、212回もパンチを繰り出すことになりました。
では反対に
1発のパンチが「何秒」であれば音速を超えるのか?
という疑問もわいてきます。

1秒で212回パンチが繰り出されるなら、1回のパンチが繰り出される時間は「1/212秒」
すなわち、パンチ1発撃つのに
0.0047秒
この時間内であれば、そのパンチは「マッハパンチ」となります。
こう考えると
マッハパンチを繰り出す人たちは、いかに「想像を絶した人間」なのかわかると思います。

どういうこと?
人間の反応速度は、一般的に0.2秒ほどと言われています。

脳から神経を伝って各部を動かそうとする時間が、常人であれば「0.2秒」かかるところ
マッハパンチを打つ人たちは、常人の「42.6倍」の速さ
で動けています。
「(低い)ラ」の音を出しながら戦う「マッハパンチ」は
1秒で、212回パンチを打ち込むか
常人の42.6倍のスピードで、パンチを放つ。

しかも意外だったのは、北斗の拳の「ケンシロウ」の必殺技。「北斗百裂拳」


ま、置いておこう。
北斗百裂拳は、アニメの描写から計算すると「3秒で50発」程度らしいのです。
そうなると、ケンシロウのパンチは「1秒で16~17発」程度。
ケンシロウのパンチは「音速を超えていない」という、事実。

ちなみに、「あたあっ」1発出すのにかかった時間は「0.06秒」。
北斗百裂拳だけでケンシロウの能力をはかるなら、トップアスリートの「倍」程度(の反応速度)でしかありません。

っていうか、北斗神拳って「経絡秘孔(架空の急所)」を突くこと極意としているんだよね?
ってことは50~100発も打つ必要はなくて「わずか1発目」で相手は死ぬんじゃ…?

それにも関わらず、

って言い放つケンシロウ。
食らった敵は「なにぃ~」では無く

としか言えないハズです(笑)
こんなにもいる!音速を超えているヤツら
さきほど解説したとおり、音速を「超える(またはそれに近い)」と「衝撃波」が発生します。
ということは
動作に際して「衝撃波」が発生しているものは、もれなく音速を超えている可能性
があります。


アンパンマンと名前似てるけど。
就職活動に行き詰る青年・サイタマは、ある日街で暴れていた怪人から少年を救いだす。
そして「ヒーローになりたい」という幼き日の夢を思い出し、就活を止め、「頭髪全て」を失うほど懸命なトレーニングを3年間行った結果、どんな敵でも一撃で倒せる最強の力を手に入れた。
参考 Wikipedia
このワンパンマンの主人公「サイタマ」が放った本気のパンチが、さっきのシーンです。

これによりサイタマも「マッハパンチ」を会得していることがわかりますね。

逆に、同じく「ワンパンマン」に出てくる「音速のソニック(忍者)」は、音速を超えていない可能性が高いかもしれないです。衝撃波出しているシーン、あったかな?奥義「十影葬」ですら出てなかったから・・・。
名前負けの、音速のパニック・・・ソニック。
…っとここで、新たな疑問が…。

「自然と”音速”を超えちゃっている」って人、結構多いんじゃないのか?
と思ったので、 さっそく調べてみました。ポイントをおさらいします。
音速を超えると「衝撃波が発生」
↓
衝撃波が出ていれば、音速を超えている可能性
でしたね。

では参ります。

緑谷出久(みどりや いずく)

僕のヒーローアカデミア:主人公 緑谷出久(通称デク)
「更に向こうのステージへ行くため」のヒントを得たシーン。

獣の巨人(ジーク)

進撃の巨人:獣の巨人 (ジーク)
>>進撃の巨人
「目指すは、完全試合(パーフェクトゲーム)だ」といって岩(石?)を放ったシーン。
時速161kmで動ける「リヴァイ」※ですら、その岩に反応できませんでした。
※進撃の巨人空想科学読本についてレビュー参照

三条加奈子

テラフォーマーズ:三条加奈子 手術ベース「ハリオアマツバメ」
ゴキブリの群れに襲われている仲間たちのもとに、間一髪「飛んで入った」女性。



これによると、三条加奈子は「時速170km~350km」が最高速度の範囲。
しかしどう見ても、さっきの瞬間は「衝撃波」が発生しているように見えますよね。



(170km/h~350km/h → 1,225km/h)
エヴァンゲリオン初号機

新世紀エヴァンゲリオン:汎用人型決戦兵器「初号機(EVA-01TESTTYPE)」
仲間とともに「第8の使徒サハクィエル(敵)」を迎え撃つため、「初号機」に搭乗している碇シンジ(主人公)が、現場へ向かい疾走している場面。

009 島村ジョー

009 RE:CYBORG :島村ジョー(009)
映画『009 RE:CYBORG』で出てくる主人公「島村ジョー」が、迫り来る爆風から逃れているシーン。

衝撃波は、先頭部と空気との衝突により発生(その後、戦闘機などでは尾翼などとぶつかることにより再び発生)します。

しかし、009の場合

シーンの一瞬を切り取ると違和感はないんですけど、実際は「走っている最中」なので、手は「交互」にジョーの前に出ています。
それにも関わらず、衝撃波は常に一定・・・。


気になる方は、高校生となった彼(島村ジョー)をチェックしてみて下さい。
衝撃波は観測されないけど、音速を超えているもの
衝撃波が出ていれば、音速以上で動いている。
しかし中には「衝撃波」の描写が無くても音速を超えていないとおかしいものがあります。

シンカリオン(変形前)

息子が大好き、シンカリオン。
2018年1月より、TBS系列で土曜朝7時から放送されているアニメです。

「はやぶさ」「こまち」「かがやき」など、それぞれの新幹線が巨大ロボ 「シンカリオン」に変身するために必要な速度(=超進化速度)が、まさに音速。


ばいきんまん
【つよい】アンパンチは細胞の一片も残さず消し飛ぶレベルの威力https://t.co/Lm6ymfag5c
ばいきんまんは、スペースシャトルが大気圏に再突入する際の速度でふっとばされ、米軍の地中貫通爆弾9発分のエネルギーを受けているとの結論に。 pic.twitter.com/FVO4Jyz3sX
— ライブドアニュース (@livedoornews) 2017年6月24日
この計算が正しければ、確かに「アンパンチ」を食らった「ばいきんまん」は音速を遙かに超えています。
(この計算によれば、時速24,155km。音速の約19.7倍)

アンパンマンワールドは何を隠そう「妖精の国」の話なので、はたして自然法則が成り立つかどうか・・・。
そして、「空想科学読本」でおなじみ柳田先生はコチラで
一方アンパンチは、ばいきんまんの乗るバイキンUFOを空の彼方までぶっ飛ばす。
バイキンUFOは、全高も直径も2.4mほどで、推定重量は1t前後。これが視力1の人に見えなくなる距離は8㎞であり、アニメで計ると、見えなくなるまで3.4秒かかっている。すると、バイキンUFOはマッハ6.9でぶっ飛んでいるはず!引用 空想科学読本WEB
と語っています。


だって「それいけ!アンパンマン」は1500体の妖精と1匹の犬の物語なんですもの。
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殺せんせー

暗殺教室:殺せんせー
実は、殺せんせーって(私の知る限り)音速を超えて移動しているシーンが見当たりません。

え?!殺せんせーって「マッハ20」で移動できるんじゃないの?
そう、確かに殺せんせーは音速を軽く越えて移動できるハズなんですが、すべて「計算上」音速を超えていないと達成出来ないことばかりでした。

近いかな?と思ったのが、上記の「生徒を抱えて飛んでいる」シーン。
ダイラタンシ-現象(遅い刺激に対しては液体のようにして振る舞い、速い刺激に対しては固体のように振る舞う現象)を説明するべく、ハワイに教え子の中学生2人(+”律”と呼ばれる兵器も)を連れて行くシーン。
・・・。着いちゃった。
軽く授業をしている間に、ハワイまで!!
連れてこられた生徒がこう発言していることから、計算上は音速を超えていないと不可能。
(ハワイまでは約6400kmです。20分ほどで移動してきたとしたら時速19,200km。すなわちマッハ15.7に相当します。)
しかし、衝撃波などは観測できず。

これ以上はネタバレになるので、気になる方はどうぞご自分で読んで確かめてみて下さい。
本当に音速超えてるの?審議したいキャラクター
さきほどは、衝撃波が出ていなくても「計算することで(または一目で)」音速を超えていることがわかりました。
では反対に、設定や表現などで
- 音速
- マッハ
を超えているような表現があるものの

というシーンも、いくつか見つかりましたのでお送りします。


ま、気にしない気にしない。
アイザック=ネテロ

HUNTER×HUNTER:ハンター協会第12代会長 アイザック=ネテロ
感謝の正拳突き1万回を繰り返すうちに、たどり着いた境地。

神尾アキラ

テニスの王子様:神尾アキラ 不動峰中学校2年生(当時)
超スピードで走り込んだ勢いを活かして繰り出される、高速スライスショット。

番外編
漫画やアニメじゃないけど、紹介しておくべき2大ヒーロー(シリーズ)を紹介します。
仮面ライダーシリーズ

仮面ライダーが乗るバイクはもれなく、「最高時速400km(サイクロン号)」というような設定があります。
>>平成ライダー対昭和ライダー 仮面ライダー大戦feat.スーパー戦隊
400km/hもそうですが、意外なことに仮面ライダーたちが乗るバイクは音速を超えてきません。

もちろん、中には「仮面ライダーキバ」の「ブロンブースター」(最高速度1,550km/h)のように、音速を超えるマシンも何台かあるんですが、全ライダーバイクのうち数台だけです。

ウルトラマンシリーズ

地球に害をなす怪獣・宇宙人と戦ってくれる正義のヒーロー「ウルトラマン」
彼ら(の多く)は、地球外に存在する「M78星雲」に属する、地球の60倍ほどの大きさの星「ウルトラの星」からやってきます。

そんな彼らのスケールは、すさまじいものがあります。
ほとんどのウルトラマンは
- 身長=40~50m
- 体重=3万~5万トン
このデータがあてはまります。


なんで?

あの時(突入前)の隕石ですら、「大きさ17~20m」「重さ1万~1万3千トン」でしたから。

さらに驚くべきは、その(最高)移動速度。
個人差(個体差?)が大きいですが、だいたいウルトラマンたちは
マッハ5~20
出せるといいます。

うん、速い。
と感心するだけでなく、これこそツッコミポイントなのですよ。
さっきの隕石は「落下」しているので最大で「秒速19km(約マッハ56)」ほどの速さで移動(落下)していたようです。
ウルトラマンたちは水平方向でも「この半分ほどの速さ」は出せるということになります。
大きさ40m~50m、重さ3トン~5トンの物体が、マッハ20ほどで飛び回っている。



音速とアニメ・漫画のまとめ
本当は、他にも
ガンダムの戦闘シーンは自作自演?
水中なら漫画のように音を聞いてから銃弾をよけられる?
なども話したかったですが、私の頭が追い付かないのと、時間的制約の理由から機会があればまたどこかでしたいと思います。
もし、うかつに「マッハ」「衝撃波」を使うと
「時速1,225km」というとてつもない速さを、軽々しく扱ってしまう可能性がある
ということだけは、雑学として知っていても楽しいかもしれませんね。
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