テラフォーマーズのテラフォーミング計画

漫画テラフォーマーズの火星移住計画が可能かどうか、今更ながら真剣に考察してみた

テラフォーマーズのテラフォーミング計画

累計発行部数1400万部を超える、漫画「テラフォーマーズ」。

※執筆時、漫画全巻ドットコム調べ参考累計発行部数一覧

 

アニメや映画化にまでなったテラフォーマーズですが、今更ながらこんな素朴な疑問が出てまいりました。

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火星にゴキブリ放って、住めるような環境にするってのは可能なのか?

ということで物理教師アニメ第9弾は、漫画テラフォーマーズの謎に迫っていきたいと思います。

他の「物理教師がアニメを語るとシリーズ」はこちら参考物理教師がアニメを語るとシリーズへ

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まずは作品をご存じない方(なんとなく知っている程度の方)のために、簡単に作品の世界観をおさらい。
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21世紀中盤、火星を地球みたいにするための計画=テラフォーミング計画が始動

人口が増え続けた地球。

それにより引き起こされたさまざまな問題を解決すべく、人類は地球のとなりの惑星「火星」を居住可能な惑星に変える計画=火星の地球化計画(テラフォーミング計画)を実行します。

そのために用いられた道具(手段)が、苔(こけ)とゴキブリ。

こいつらを使って(長い年月をかけて)、火星の温暖化をはかるとともに酸素を増やし、第二の地球を作り上げようとした。

そして約500年〜600年後の26世紀後半〜27世紀。

増えすぎたゴキブリを駆除するために、地球から特別な手術を受けてパワーアップした戦闘員達が、火星に送り込まれます。(作中で第1回討伐隊は2579年)

その後数十年に渡る(引き起こされる)政治的な問題や人間ドラマ、人類vsゴキブリという、想像しただけでおぞましいバトルが魅力的な漫画です。

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火星移住が可能なのか

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そもそもさ、火星って地球みたいになるの?

と思う人が大半だと思いますので、まずは簡単に火星についての特徴をまとめますね。

 

火星の基礎データ

意外に知られていませんが(もしくは誤解されている?)、火星には地球によく似た部分と、大きく異なる部分があります。

参考参考JAXAホームページ

地球と似ている部分

  • 四季がある
  • 大気がある(しかし95%以上がCO2
  • H2Oの氷がある(CO2との混合、過去には液体の水もあったか?)
  • 1日がほぼ24時間
  • 衛生が2つある(地球は1個=月、水星・金星にはなし)
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ちなみに木星以降の惑星にも衛星はありますが、その数は桁が1つ増えます。(例えば木星なら67個もの衛星があります。)

では反対に似ていない部分です。

地球と似ていない部分

  • 大きさは地球の半分程度
  • 平均気温は-50度~-60度(冬の寒い夜には-140度近くになることも)
  • 大気が地球の150分の1~100分の1程度しかない
  • 磁場がほとんどない(失った?)
  • 意外と遠い(地球ー太陽間の半分くらい、地球から離れている)
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特に「意外と遠い」ことを知らない人が多いみたいですね。地球に最も接近したと言われている2018年でも、約5800万kmほど離れています。

参考参考https://www.nao.ac.jp/astro/sky/2018/07-topics03.html

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つい「火星に住む計画」と聞くと、ご近所のイメージがありますが、仮に旅客機(平均時速900km/h)で火星に行った場合、片道約7年5ヶ月かかる計算です。

※計算方法…5800万km ÷ 900km/h ≒ 約64,000時間 ≒ 2,700日 ≒ 7年5ヶ月

 

酸素の少なさや寒さなど、火星に住むためには課題が山積み

火星の温暖化を進めるが、重力が弱いので酸素と水蒸気が逃げている様子

火星がそのまま住めないのはなんとなく想像できますよね。

  • 液体の水が無い
  • 寒い
  • 酸素が無い
  • 磁場が無い

など、地球と似ていない部分がそのまま居住不可能な理由に直結します。

 

これらを解決するために、漫画テラフォーマーズでは苔とゴキブリを放つわけです。

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苔とゴキブリだけで、火星が居住可能な星になるのか? は後半に言及します。

 

漫画の世界から切り離し(ゴキブリには頼らず)、実際のテラフォーミング計画はどうするのか?  というと

  • 温室効果の高いメタンなどを散布(温暖化)
  • 火星の衛星軌道上に(人工衛星のように)大きな鏡を置いて、地表を効率よく温める
  • 地球と同様に嫌気呼吸の(二酸化炭素を吸って酸素を吐き出す)生物を大量に定着させ、長い年月をかけて酸素を増やす

こんな方法が可能なのではないか? と考えられていますが、なかなか現実的なものとは言えなさそうですね。(主にコストの面で)

 

その他の問題点は、火星は小さいので自身の重力が弱く(地球の3分の1程度)、また冷えきった内部のせいで磁場も発生していません(ダイナモ効果に基づく推察)。

 

重力が弱いということは、様々なモノが定着しにくいことを意味します。

たとえば水蒸気や酸素なんかが出来ても、割と簡単に宇宙空間へ放出してしまうでしょう。

 

磁場がないということは、有害な電磁波から惑星を守る手立てがないということです。簡単に言えば、X線を浴びまくる状態。

あと、磁場がないことで気象・環境にとっても、さまざまな悪影響を及ぼす可能性が高そうです。

 

いずれにせよ、火星に住むためには課題は山積みなんですね、実際問題。

 

漫画テラフォーマーズに出てくるテラフォーミングの疑問点

おまたせしました。

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別に待ってねーし、前置きが長すぎるよ。

前置きが長いのは、いつものことながら申し訳ない。

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せっかくなら本ブログの真髄「雑学」も堪能してほしいですからね。

 

ということで、漫画テラフォーマーズのテラフォーミング計画に対して、物理教師として疑問に思ったことをぶつけてみます。

 

ゴキブリ爆発死

地球のゴキブリは火星では爆発する?

火星の気圧は非常に低く(6~9hPa)、地球上の気圧(1013hPa)と比べると、わずか0.6~0.9%ほどしかありません。

参考参考JAXAホームページ

火星に連れて行ったゴキブリは、おそらく地球産。

内圧(ゴキブリの体内の圧力)は、地球の大気圧と同じと考えて良いでしょう。たぶん。

 

そんなゴキブリを、100分の1~150分の1という気圧の火星に放った途端、次々と内側からはじけ飛ぶと思います。

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特別な手術を施したゴキブリ(例えば真空中でも生きられる「クマムシ」の性質を埋め込んだなど)じゃ無い限り。

いくらゴキブリが堅いキチン質の殻に守られているとは言え、100倍以上もの圧力差に耐えられるとは考えにくいので、火星に放った途端、ゴキブリたちの大量爆発死が引き起こされると思います

 

進化スピードが恐ろしい

テラフォーマーはゴキブリからわずか数百年で進化を遂げる

少なくとも3億年ほど前からいると言われているゴキブリ。大先輩なのでこれからは「ゴキさん」と表現します。

そんなゴキさんのフォルムや構造は、3億年前からさほど大きくは変わっていないようです。

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言い換えれば、それだけ完全体ということか?

3億年という長い年月、地球に巨大隕石が落ちてこようが、氷河期がやってこようが、形や機能を大きく変えずに繁殖し続けたゴキさんの生命力たるや、すさまじいものがあります。

 

が、しかしですよ。

漫画テラフォーマーズの世界では、わずか500年かそこらの「数百年」で、高度な知能を持ち合わせた姿にまで進化を遂げています。

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人為的な施しがあったとしてもね。

 

地球上で約10億年前に発生した多細胞が、その後「数億年」かけて多種多様な動植物へと進化していった(カンブリア紀の大爆発という)事実を考えると、実に火星のゴキさんの進化のスピードは100万倍です。

※参考記事参考JAXAホームページ

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人類の歴史で考えても、600万年くらいかけて今のヒトになっていますからね。ヒトの進化と照らし合わせても、このゴキさん達の進化スピードは1万倍くらいの早さです。

 

寿命は3~5ヶ月といわれているゴキさん。(日本にいる一般的なゴキさんなら)

人間の寿命が60~80年程度だと考えれば(720ヶ月~960ヶ月)、ゴキさんの成長スピード(世代ごとに進化・変化していくスピード)が200~300倍程度なら、まだ納得できるんですけどね・・・。

例えば1万年かけて、ゴキさんがテラフォーマーに進化したとかなら・・・ね。

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ちなみに日本人の身長は70年間で10cm以上は伸びています。実に6~7%ほど変化になりますが、それでも構造上大きな変化とは言いがたいです。言い換えれば、数十年ではその程度しか変化できないということなので、数百年程度でもたかがしれているでしょう。

 

火星で生まれたテラフォーマーは、体がもろいのでは?

重力が弱いところで育った生物は体が脆いのか?

あまりゴキブリの話でこの記事を埋めたくないのですが、最後にゴキさんネタでもう一つ。

重力の無い宇宙空間で長く滞在していると、人の場合骨密度が低下し(地上の)骨粗鬆症の患者の約10倍のスピードで、骨の密度が低下していくというデータがあります。

※参考参考日本人初めての宇宙長期滞在を達成して

 

テラフォーマー(火星で独自に進化したゴキさんの呼称)が火星産なのであれば、地球の3分の1程度の重力環境の中で生まれ育ったということになります。

ゴキさんには骨がありませんが、地球の3分の1の重力で過ごすのに適した体となっているのならば、耐久度は随分と落ちていると思うんですけどね~。

 

コケだけで緑化が可能か?

最後に、火星の地球化計画のもうひとつの立役者「苔(コケ)」についても。

確かにコケ類は乾燥に強いと言われていて、十数年の乾燥くらいなら繁殖できると言われています。

体全体で水分を補給するメカニズムをとるコケ類は、わずかな水分でも繁殖しやすいのかもしれません。

 

また(約35億年前の地球上で)大量の酸素を生み出すことになったきっかけの生物「シアノバクテリア」なんかも、乾燥に強いと言われています。

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シアノバクテリアは藻類になります。

ただいずれも、単体で繁殖をし続けるには限界があります。

火星の地上には(爆発を逃れた)ゴキさん達が大量にいて、奴らが排泄する有機物を分解するいわゆる「分解者(微生物)」が必要不可欠です。

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おい、結局ゴキさんがまた登場してるぞ。

解き放たれた苔が「共生(=異種を取り込んで生活、進化していく)」していった可能性もあるのかな? 消化器官を取り込んだ苔が増殖し、分解・生産までを一手に担っていたという可能性・・・。

うーん・・・。やっぱ無理があるよな。

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地球上の話に戻すと、シアノバクテリアを取り込んだ真核細胞(詳細不明)が、共生により進化を遂げ、葉緑体を作り出したとされていますが・・・。わずか数百年という短い時間では、そこまでの進化は期待できそうにありませんね。

HUNTER×HUNTERで出てくる「摂食交配」の考え方も面白いのですが、あれはあの世界だけの話(造語)ですからね。

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食べた動植物の遺伝子を組み込むってのは、不可能です。

 

いずれにせよ、苔とゴキさんがともに活動するためには(地球上だけの常識で考えれば)、菌類(カビ)や細菌類、ミミズなどのいわゆる「分解者」と呼ばれる生物たちが必要不可欠だと思います。

 

テラフォーマーズ考察のまとめ

漫画テラフォーマーズに出てくるテラフォーミング計画は、発想がものすごく面白いのですが、正直なところ非常に無茶のある設定だと言わざるを得ません。

 

最後に余談を一つ。

地球上では、ゴキブリを殺すのに一般的には殺虫剤を使うと思います。

しかし、呼吸のメカニズムやゴキブリの構造を知っている人なら「中性洗剤など界面活性剤を含むもの」でも殺せる事をしっています。

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ゴキブリを窒息死させられるからです。

おそらくテラフォーマー達も、口こそあれど呼吸はゴキブリと同じく「気門(ゴキブリが呼吸する器官)」で行っている可能性が高いですし、表面(の黒光り)の描写から、全身が油に覆われているようにも感じます。

となると、中性洗剤は有効だと思うんですよね。

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上位ランカーには専用武器が与えられていますが、下位ランカーの戦闘員達にはぜひ、中性洗剤を発射できるようなスプレーを持たせてあげましょう。下手な銃よりもよっぽど効果に期待がもてます。

じょじょ、じょーじ(お読み頂きありがとうございました)

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